犬を飼おうと思ったとき、ペットショップではなく「保護犬」を引き取りたいと思う方もいるかもしれません。
保護犬というと真っ先に思い浮かべるのは保健所です。
しかし、昨今では民間団体が運営する保護施設や、様々な形態の動物愛護団体から保護犬を譲渡してもらえます。
保護犬を実際に迎え入れるにはどのような手順で、そしてどれくらいの費用が必要なのでしょうか?
動物福祉の観点から保護犬の譲渡活動を展開する一般社団法人「アニフェア」を例に、譲渡の実際を検証してみました。
この記事の目次
犬を飼うためには責任と費用が必須
まず始めに、保護犬に限らず犬を飼うための費用を考えてみましょう。
ペットを飼ったことがある方はお分かりかと思いますが、動物の飼養には責任と費用が必須です。
特に犬は屋外で家族以外と接する機会が多い動物。
大切な犬へはもちろん、他の方への配慮も欠かせません。
犬一頭を生涯にわたって飼養すると…
犬を飼養するためにはかなりのお金がかかります。
すぐに想像できるのは「フード代」ですが、自宅で犬が満ち足りた状態で過ごすためには、フード代以外にも様々な支出が必要です。
犬の飼養者にデータを取って計算したところ、一か月あたりの支出総額は約14,000~28,000円でした。
この結果に幅があるのは、犬種による違いはもちろん、フード代以外でも様々な状況で費用が発生するためと考えられます。
飼い主よりも犬の美容代が高いと答えた方が全体の4割もいることから、トリミングなど毛のお手入れ代金は欠かせません。
首輪やリードなどすぐに思いつくグッズ代金は思ったより高くはなく、意外なことに「飼育に伴う光熱費」が増加傾向にあるようです。
仕事などで留守にする間でも、犬が体調不良にならないよう冷暖房をつける必要があります。
昨今の電気代上昇に伴い、ペットのいる室内を快適に保つための光熱費も増加しているのです。
犬を最初に迎え入れるための初期費用、毎月かかる費用などを合計し、犬の寿命をおよそ15年と考えた場合の生涯費用は約500~600万円はかかることが想定されます。
病気やケガになったとき
犬を飼養する上で必ずお世話になるのが獣医さん。
犬が病気やケガをしたときは人間のように健康保険はありませんから、基本的にかなり高額の医療費を支払うことになります。
実は犬の場合、平均すると「フード代」と「ケガや病気の治療費」がほぼ同じか、治療費の方が高額になる傾向にあります。
任意でペット保険に加入していても治療費がかかることが多く、快適な飼養には治療費をしっかり確保してあげなくてはなりません。
子犬の頃は急な体調不良や活動量が多いことでのケガが多く、成犬期にはいったん落ち着きます。
「うちの犬は特に獣医さんのお世話になることはないから…」と安心していると、7歳以降のシニア期に慌てることになるかもしれません。
犬も寿命が延び、シニア期以降は腫瘍や心疾患など内科疾患が増えて、治療費が急に増えてくるステージに入ります。
また、犬全体に言えることとして、皮膚疾患のケアや口腔ケアが非常に大切です。
元気で長生きしてもらうためにはこのふたつのケアは欠かせません。
ペットの飼養にかかる費用のうち、医療費やペット保険費用もかなりの割合を占めていると言えるでしょう。
保護犬を迎えるために必要な費用
ここまでは一般的な犬を生涯飼養する際の費用についてご説明しました。
それでは、保護犬をお迎えするにはどれくらいの費用が必要なのでしょうか?
保護犬を迎えたいという方は、動物福祉への関心や保護犬への愛情をお持ちの方かと思います。
しっかり準備をして、不安なく保護犬を迎えてあげましょう。
無料から有料まで様々!その理由は?
どのような場合でも、「保護犬を譲渡」される場合、犬本体の費用(いわゆる生体料)は無料です。
それでも諸費用を計算すると完全に無料というわけにはいきません。
完全無料では動物虐待目的の人が悪用するかもしれませんし、昨今ではワクチンやマイクロチップなどの実費が掛かるようになっています。
犬を飼うときに最初に必要な初期費用は、ペットショップなどで犬を購入すると平均約400,000円とされています。
このうち、ペットそのものの生体料は約100,000~300,000円。
特に珍しい犬種や毛色の子犬は生体料だけで500,000円を超えることも考えられます。
その他、ケージやフードなどの日用品購入が必要です。
これに対し、保護犬の場合生体購入費用は掛かりません。
ただし、多くの保護犬が医療費やマイクロチップ挿入費、ワクチン代、場合によっては避妊去勢手術の費用が必要です。
都道府県立の愛護センターでは10,000円以内であることもありますが、民間の愛護団体では交通費や寄付金などの譲渡費用を想定しておきましょう。
ペットショップなどで生体購入するよりは大幅に安価で済みますが、保護犬でも初期費用は100,000円以上の予算を組んでおいた方が安心です。
自治体の保健所だけでは間に合わない現実
各自治体の保健所が運営する愛護センターは比較的安価に保護犬を譲渡してもらえます。
ではなぜ、民間の愛護団体では譲渡費用が高くなるのでしょうか?
それは、自治体だけでは犬の保護がしきれない現実があるからです。
保護犬や保護猫を自治体だけで飼養し譲渡活動を行うのは、現状では非常に困難です。
年々減ってはいるものの、やむを得ない場合は殺処分も行われています。
このため、自治体と連携して民間の愛護団体が保健所から犬を引き受け、保護活動を行っている場合がほとんど。
ボランティアで保護活動を行うケースもありますが、前の段落でもご説明したとおり、犬の飼養には非常にお金がかかります。
犬の保護活動を維持するための費用、そして動物福祉を実現した健やかな飼養には、公的機関やボランティアだけではカバーしきれない費用が発生します。
このため、譲渡費用を設定し、寄付金をお願いしているのです。
保護犬のすべてを受け入れる活動には大変な費用がかかる
保護犬をお迎えするとき、新たな飼い主と保護犬の橋渡しをしてくれるのが動物愛護団体です。
各地に保護団体はたくさんあり、規模はさまざま。
活動内容も微妙に異なりますが、基本的に殺処分は行いません。
里親が見つかるまであきらめずに探し、場合によっては保護犬の生涯飼養も行います。
犬が保護されるまでの経緯によっては、高額の医療費が必要なこともあります。
こういったすべてを受け入れて保護していく活動には大変な費用が掛かります。
寄付で出来る保護活動支援
もし今保護犬のお迎えを検討中の方や、お迎えしたいけれど現状では無理だと思っている方は、お迎え以外でも寄付金で支援をすることが可能です。
寄付金は「引き取った犬そのもの」だけでなく、今里親を待っているすべての保護犬に対して役立てられます。
お迎えができなくても支援をしたいというお気持ちをお持ちの方は、ぜひ犬の保護活動を行っている愛護団体への寄付をお考え下さい。
保護犬譲渡サイト「アニフェア」で保護犬をお迎えしてみよう
それでは、実際に保護団体から保護犬をお迎えする具体例を見てみましょう。
ここでは犬の保護シェルターと譲渡サイトを展開し、里親探しを行う愛護団体「アニフェア」をご紹介します。
保護団体から引き取る際の特徴
民間の愛護団体は、保護期限に制限はなく、全ての犬に無期限の保護と譲渡活動を行っています。
初期費用は保健所に比べて高額であることが多く、譲渡費用や寄付金が必要です。
団体によって規模や譲渡条件はさまざまですが、犬種や年齢などが幅広く、全国対応であることが多いのが特徴。
お迎え予定の犬によっては医療的なケアやワクチン接種が必要なため、譲渡費用に差があります。
気になる犬がいたらピンポイントで質問して、譲渡費用を確認しましょう。
動物福祉に根差した保護活動
犬の保護活動や譲渡活動を積極的に行っている一般社団法人「アニフェア(anifare)」は、「Animal Wellfare(アニマルウェルフェア=動物福祉)」の言葉を由来とした保護団体です。
アニフェアの理念は日本における動物福祉を推進し、保護犬に医療と家族を提供すること。
保護犬のお迎えをしたい方は、少しでも飼い主のいない犬に寄り添いたいという優しいお気持ちをお持ちだと思います。
動物が苦痛なく健やかに人と生きていくため、昨今提唱されているのが「Animal Wellfare(アニマルウェルフェア=動物福祉)」です。
1960年代にイギリスで確率された「動物の5つの自由」に基づいた考え方で、往来の「かわいそう」という人間の感情から生まれた動物福祉とも少し異なります。
うまれてから死ぬまでの動物の身体的・精神的状態のことを指し、動物が心地よく安全・安心に暮らせるための指針となります。
日本では家畜などでも適応され、ペットにおいては、
- 空腹と渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛み・損傷・疾病からの自由
- 恐怖と苦悩からの自由
- 正常行動発現の自由
といった、動物主体で考えられる5つ自由を、過不足なく与えることが飼い主に求められています。
動物が好きな方にとっては当たり前のこれらがきちんと守られていないことが、大変残念ながら現在の日本では横行しています。
保護犬が存在するのは、このアニマルウェルフェアが守られなかったことも理由のひとつです。
医療的ケアに特化したアニフェアから保護犬を引き受けよう
日本の保護犬譲渡活動で圧倒的に足りていないものは、医療的ケアだとされています。
アニフェアでは獣医師賛同における里親募集サイトを運営しており、譲渡決定後の引き渡しでは、動物病院での健康診断と飼育アドバイスを行っています。
一般的な捨て犬だけでなく、ブリーダーさんの元で役目を終えた繁殖リタイア犬も多く、いわゆる純血種で飼い主がいないまま成犬になってしまった犬たちの保護にも力を入れています。
アニフェアの保護シェルターは「リコンディショニングセンター」と呼ばれ、管理獣医師がいることが特徴。
保護犬の受け入れ時には健康管理シートを作成し、獣医師指導のもとでスタッフが保護犬のお世話を行っています。
保護犬は医療的ケアが必要な場合がほとんどですが、ボランティアや一般シェルターではカバーできない部分に焦点を当てた新しいシェルターです。
シェルターには検査装置や手術設備はないため、大掛かりな医療行為は行えません。
アニフェアではリコンディショニングセンターでできる限り可能な範囲での治療や処置を行い、お引渡しの際のサポート動物病院や新たな飼い主に正確な健康データが渡るようなサポートをしています。
譲渡金には保護犬の生活の質を保つための寄付金が含まれる
アニフェアではすべての保護犬が生涯にわたり適切な医療を受けられる仕組みを構築することが目標。
ペットのお迎えセットやペット保険の加入なども万全の態勢で行われており、保護犬が新たな飼い主に迎えられた後の生活にも配慮をしています。
保護犬と新たな飼い主の出会いはご縁に頼るところが大きく、残念ながら飼い主が現れないこともあります。
そういった場合でも、保健所ではなく民間団体なら終生飼養が大前提。
アニフェアでは保護犬飼育者の数を増やすことはもちろん、すべての保護犬の食生活と住環境の質を上げることにも重きを置いています。
ペットショップで新たな子犬を購入する生体代金よりは安価とはいえ、民間団体での譲渡金は保健所に比べて決して安くはありません。
アニフェアでも譲渡の際には譲渡金や寄付金が発生しますが、それはこれからの保護活動や譲渡活動に役立てられています。
保護犬のために役立てられる大切な費用として、皆様の温かいご理解とご支援を頂きたいと願っているそうです。
参照:アニフェアについて(アニフェア公式サイトより)
https://anifare.jp/about/
アニフェアシェルターご紹介(リコンディショニングセンター)
https://anifare.jp/shelter/
まとめ
この記事では、保護犬を迎えるためには具体的にどれくらいの費用が掛かるのかをご紹介しました。
保健所でも民間の保護団体でも、保護犬の譲渡に生体購入費用は掛かりません。
このためペットショップで子犬を購入する場合に比べては大幅に安価ですが、初期費用はしっかりと見積もって確保することが必要です。
犬の飼養および保護活動にはたいへんな費用が掛かります。
特に医療的ケアに特化したアニフェアでは、そういった費用を譲渡金や寄付金で支えています。
犬の幸せな生活を願う優しい方々には、ぜひ「Animal Wellfare(アニマルウェルフェア=動物福祉)」について今一度お考え願えればと思います。
保護された犬たちは、医療的なケアと新しい飼い主を待っています。
譲渡活動の維持やアニマルウェルフェアに基づく観点からも、保護犬のお迎えや積極的な寄付などの支援をご検討下さい。