最近よく耳にする「保護犬」「保護猫」。
彼らが新たな里親を見つけて巣立っていくまで過ごす場所が「シェルター」と呼ばれるところです。
なんとなく知ってはいても、詳しく知らない方がほとんどではないでしょうか?
保護動物で圧倒的に多い「犬」のシェルターについて、その種類や役割、保健所との違いなどをご紹介致します。
この記事の目次
犬のシェルターの種類
行き場のない動物を保護する施設は「アニマルシェルター」と呼ばれ、日本では犬と猫が大多数です。
単にシェルターといえば、ほぼ犬か猫の保護シェルターであると言っていいでしょう。
日本では一昔前のようにノラ犬を見かけることがほとんどなくなりましたが、それは保健衛生とシェルターが機能しているからです。
ここでは、様々な形態がある犬のシェルターについてご紹介します。
行き場のない犬を一時的に保護する施設のこと
シェルターとは、様々な理由で行き場のない犬を一時的に保護する施設のことです。
保護される犬の事情はさまざまですが、飼い主がいない状態の犬を放置するわけにはいきません。
個人宅で1、2匹を預かる場合とは異なり、シェルターには同時に複数の犬を責任もって預かり、そのお世話をすることが求められます。
このためある程度の広さや犬舎などの設備が整っていなくてはなりません。
自治体が管理する「保健所」と「動物愛護センター」
シェルターの中で最も知名度が高いのが「保健所」でしょう。
保健所も広い意味ではシェルター機能を持っています。
ただし、保健所で犬を保護する期間には残念ながら決まりがあります。
もし飼い主がいて迷子になっただけの場合、保護期間内に飼い主が見つかれば犬は自宅に戻ることができます。
自治体によって保護期間が異なりますが、最終的には殺処分になってしまうこともあるのが現実です。
こうした現状を改善し、少しでも殺処分を減らすための試みとして、各都道府県や市区町村に「動物愛護センター」が置かれています。
動物愛護センターは保健所と連携して犬を保護し、積極的に里親探しも行います。
保健所と同部愛護センターは、自治体が管理する公的な機関。
可能な限り殺処分にならないよう配慮はされていますが、「人の健康や生活」が主軸のため、殺処分ゼロとはいかないのが現状です。
人に危害を加えた場合、治る見込みのない病気にかかっている場合、そして飼い主自らが持ち込んだ場合などは、殺処分になってしまいます。
「動物愛護団体」が運用するシェルター
自治体が管理する保健所などに対し、様々な形態で展開されているのが「動物愛護団体」運用のシェルターです。
個人ボランティアが大規模に行っているものや、法人、非営利団体、株式会社まで幅広い母体がシェルターを運用しています。
動物愛護団体のシェルターは母体によってそれぞれ方針や理念が異なります。
基本的に殺処分は行わず、場合によっては犬を終生に渡り飼養することもあります。
動物愛護団体は各自治体に届け出を出せば、保健所から殺処分待ちの犬を引き出して保護する機能も持っています。
また、買えなくなった飼い主からの個人的な預かり要請や、ブリーダーから引き受けて保護することもあります。
参照
https://pet-ah.org/animal-shelter/
アニマルシェルターをご存知ですか?(ラパス動物病院)https://www.env.go.jp/council/14animal/y140-45/mat02_3.pdf
動物愛護管理をめぐる主な課題(資料集)(環境省自然環境局総務課 動物愛護管理室)
犬のシェルターの役割
犬のシェルターの役割は、保護だけにとどまりません。
シェルターに保護された犬たちは、新たな里親を見つけるのが最終目標となります。
犬の保護
犬が保護される理由はさまざまですが、急に飼い主がいなくなってしまうこともあります。
生き物ですからお世話は1日でも待ってくれませんし、早急に保護する必要があります。
シェルターは要請があれば迅速に対応し、必要な食料やお世話の供給を行います。
健康状態の回復
シェルターに保護された犬は健康体であるとは限りません。
可能な限りの清潔を維持し、健康管理や健康維持をする必要があります。
犬の年齢や体調に合わせて各種ワクチンを接種したり、避妊・去勢手術を行ったり、場合によってはしつけや各種訓練を行う必要があります。
新しい飼い主を探す
シェルターの役割のうち最も重要なもの、それは、新しい飼い主を探すことです。
やむを得ない事情がある場合を除き、犬たちは一般家庭で幸せに暮らすことができるように、シェルターは全力で新しい飼い主を探します。
新たな里親を見つけるために、犬の清潔や健康管理、そして里親募集のアピールがシェルターの大きな役割と使命になっています。
参照
https://pet-ah.org/animal-shelter/
アニマルシェルターをご存知ですか?(ラパス動物病院)https://wanchan.jp/column/detail/7240
シェルターメディスンはアニマルシェルターのための獣医学(わんちゃんホンポ/株式会社ピーネストジャパン)http://knots.or.jp/wp-content/images/2014/03/sympo2006.pdf
日本におけるシェルター・マネジメントの今後~行政との協働を考える~2006年国際シンポジウム記録集(神戸市 / NPO法人Knots)
犬のシェルターにおける問題点
日本は諸外国に比べてアニマルシェルターや動物福祉の概念が遅れていると言われています。
それは、動物愛護団体がボランティアに頼るところが大きいことも理由のひとつ。
ボランティア精神は大切な活動原理になりますが、それだけでは不十分なのが現状です。
犬の飼育にはお金がかかる
犬の飼育にお金がかかることは誰でも分かると思いますが、それは単純な餌代だけではありません。
犬にとって理想的な飼育環境を維持するにはさらにお金がかかります。
環境量の動物愛護管理室でも推進されていますが、1960年代の英国で提唱された動物福祉(アニマルウェルフェア)の概念があります。
「動物の5つの自由(The Five Freedoms for Animal)」がその概念です。
- 飢えと渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛み・傷害・病気からの自由
- 恐怖や抑圧からの自由
- 正常な行動を表現する自由
これらを実現するためには人の労力と時間、そしてお金が必要です。
シェルターに必要な資金を調達するための機能がないことは、日本の動物愛護団体の大きな問題点のひとつとなっています。
また、飼育頭数の制限や土地、周辺環境などもシェルターが抱えがちな問題に挙げられます。
最も大切なことは「医療」
保護された犬は健康状態が万全ではないことがあります。
こういった犬たちの健康を回復・維持することは、新たな里親を募集するためには大変重要なことです。
残念ながら、ボランティアによる運営だけでは医療面まで手が回らないことがあります。
犬の健康管理をどのようにしていくのかは、日本のシェルターが抱える大きな問題点と言えるでしょう。
犬のシェルターの探し方
どうしても事情があって犬を手放さなければならない方、保護犬に少しでも興味がある方は、自分が関わる犬のシェルターを探してみましょう。
このコラムではシェルターの種類や役割、問題点を解説してきましたが、いざシェルターを探そうという場合はどんな方法があるのでしょうか?
住んでいる地域で探す
いちばん手っ取り早い方法が住んでいる地域のシェルターを探すことです。
地域情報誌や地方紙などが情報源になります。
メリットとしては行動範囲内ならシェルターを直接見ることができる点、犬の引き渡しに自分で行くことができる点があります。
ただしこれでは範囲が狭いため、自分の理想のシェルターや保護犬と巡り合わないことが多いのがデメリット。
広く里親を募集したい、または里親希望やボランティア・寄付を希望の方は、なるべくたくさんのシェルターを探した方がいいでしょう。
インターネットで探す
犬のシェルターを探す場合は、インターネットの検索が現実的に主流となります。
全国という広い視野で探すことが可能ですし、アピール力の強いシェルターは犬の保護にしっかり手が回る基盤の大きな保護団体です。
犬のシェルター探しでお悩みの方は、ぜひ一度anifare(アニフェア)の情報に目を通してみて下さい。
アニフェアは獣医師賛同型の里親募集サイト。
個人からの犬の保護はもちろん、ブリーダーや保健所からの引き受けにより、純血種から雑種まで様々な犬を責任もって飼養しているシェルターです。
全国各地の動物病院の協力もあり、お住まいの地域近郊でのお引渡しが可能です。
最大の特徴は、犬の医療に目をむけ、里親に引渡す際は動物病院で健康診断が受けられる点。
里親になるためには寄付金が必要ですが、保護された犬たちの飼養や医療のためにしっかりと手厚い運営がされているのがポイントです。
まとめ
ひとくちに犬のシェルターといっても、種類や方針はたくさんあります。
ご自身で犬を手放さなければならない方、保護犬の里親になりたい方、そして里親にはなれないけれどボランティアとして助力したい方など、シェルターを探している方はさまざま。
しっかりと情報を探し、保護犬と人とがともに幸せになれるシェルターに出会えることを、心からお祈り致します。